表現の違いから伝えたいニュアンスをつかめるようにする専門家、
さみーこと鈴木大樹です。

先日、ちょっと古い映画ですが「マイレージ・マイライフ」をみました。

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わたくし、こういう「すべてを手にした男が人生を考え直す話」が好きでして、
改めて自分の生き方とか仕事のあり方なんかを考えさせられるいい作品だと思います。

それはさておき、洋画ではよくあることなんですが、
この映画のタイトルは原題とは異なります。
タイトルを日本向けに意訳することがあるんです。

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英語版ではこのように”Up in the air.”というのがタイトルです。
この表現の意味は「空中に漂う」ということで、
そこから地に足が付いていない人や
結婚せずにふらるさしている人を表すことがあります。

つまり、この作品のテーマが結婚や家族など地に足のついた生活をせずに
深い人間関係を避けてビジネスに勤しむ孤独な男性を描いているということが伝わります。

それに対して日本語のタイトルは
マイレージマイライフ
彼の人生の目的がマイレージを貯めることからきているのだと思いますが、
急に映画の持つメッセージ性が変わることがわかるでしょうか?
仕事に没頭して、マイレージこそが自分の人生だといわんばかりの主人公が
人生を考え直す話…といった印象になると思います。

あまり家族のような拠り所を作らずビジネスライクな人間関係を過ごす男。
マイルとか収入とかそういったものばかりを人生の目的にしている男。

タイトルの表現で、フォーカスするポイントが変わってくるのがおわかりいただけるでしょうか?
日本的には家族を持たない孤独な男というよりも、
お金や地位を目的に仕事に没頭するビジネスマンという方がイメージしやすいので
こういったタイトルへ意訳したのではないかと思います。

しかも副題はこう違います。
「あなたの”人生のスーツケース”詰め込み過ぎていませんか?」
つまり溜め込んでいくことをテーマに、
そうでない人生を選んだ男のストーリーとして表現しているのです。

それに対して英語では
”The story of a man ready to make a connection.”
つながりを作ろうとする男の物語と成っています。
ずっとup in the airな生き方をしてきた主人公が
ready to make a connectionに変わっていく物語として描いているのです。

ちなみにエンドロールではずっと飛行機の中から見える空の映像が流れます。
まさに”up in the air”ですね。

いかがでしょうか?
日本語と英語のタイトルの違いでずいぶん映画に対する見方が変わるのではないでしょうか?

こないだ流行った”let it go”も同じです。
実はこれはlet it beと比べるとよくわかる表現なのですが、
beは存在を表すことがあるので「いまのままでいいんだよ」って意味になりますが、
goはどこかへ向かうときに使う表現なので「どうにでもなれ」って意味合いが強くなります。

日本的には「あるがままに」という方がしっくりくるのでそういった訳をしたのですが、
英語の歌詞を見てみると実際はもっと力強く、若干「あとは野となれ山となれ」感がある表現が
多用されています。

こういう視点で日本語訳と英語を見比べてみると
面白い発見や考え方の違いなどが感じられて面白いと思います。
映画や音楽が好きな人はぜひやってみてください。

それでは素敵な1日を!
Have a nice day!